和食器は、和食に使う食器の総称です。
日本の文化が沢山織り込まれた和食器には、様々な種類があります。
毎日家で使うお茶碗も、もちろん和食器。おかずを盛り付けるお皿は、家で使うものは和洋折衷かもしれませんが、日本の陶器なら、だいたい和食器です。
お皿ひとつとっても、様々な種類があります。丸かったり、四角かったり、大きかったり、小さかったり。自然のものを形取った、季節を感じるものがあったり。
もう、あるのが当たり前すぎて、改めて目を向けることも少ないかもしれないですが、今回は、改めて、和食器について詳しく見ていきたいと思います。
食器を手に取ったときに、ふと思い出す。料理を盛り付けるときに、いつもと違う視点で食器を選ぶ。食器を買うときに、選択肢が増える。
知っておくとじわじわと食生活に楽しみが出てくる、和食器の基本情報です。
目次
食器の基礎を軽くおさらい!
まずは、食器について、原料別で簡単にまとめておきます。
- 陶器:陶土(粘土)が原料。1,000〜1,300度で焼かれる。生地が焼き締まっていないため吸水性がある。食器にする場合は釉薬をかけて焼き、吸水を防ぐ。厚手で重ためだが、柔らかい雰囲気を持つ。
- 磁器:主に陶石が原料。1,200〜1,400度で焼かれる。生地がしっかり焼き締まっており、吸水性はない。白く硬い。
- 漆器:木などに漆(うるし)を塗った食器。木の漆器は熱が伝わりにくく、熱いものを入れても手に取りやすい。軽くて優しい手触り。
- その他:ガラスや竹など。近代に入りプラスチックの食器も一般的に。また、箸やカトラリー(スプーンやフォークなど)も食器に分類される。
余談ですが、磁気と陶器の簡単な見分け方は、2つ。自宅の食器で確認してみましょう!
1つは、指で弾いて音を聞く方法。鈍い音がしたら陶器、「チン」と金属的な音がしたら磁器。
もう1つは、高台を見る方法。高台は、後ほど出てきますが、お茶碗などの底の台になっている部分です。高台が土色なら陶器、白色なら磁器。
この記事では、食器の中でも和食器、さらに陶磁器にフォーカスしていきます。
漆器やガラス、箸やカトラリーなどについては、別の記事で紹介していきますので、是非そちらをご覧ください。
和食器の部位の名前
和食器では、各部位に決まった名前があります。
これらの名前は、茶道において、茶碗の部分を的確に指し示すために付けられたもの、と言われています。茶碗に限らず、他の和食器でも部位の名前は同じです。
①口縁
その名の通り、食器の縁(ふち)の部分のことです。蓋がついていない器で使われる名称です。
②見込み
器の内側部分を指します。見込みの中でも、抹茶碗などで、底の部分に残ったお茶が溜まる部分を「茶溜まり」と言います。茶溜まりがあることで、少し残ったお茶がそこに集まるため、飲み終わった器も美しく見えます。
③胴
見込みに対して、器の外側部分を指します。外側の上部が胴と呼ばれます。
④腰
器の外側、胴の下部分、高台や底までが腰と呼ばれます。
⑤高台
器の底の台になっている部分です。粘土を紐のように長くし、輪っかにして後から付ける「付け高台」と、元の器の底をかんなで削って作る「削り出し高台」があります。器が安定するために必要な部分です。熱いものを入れた器は、ここを持つと少し持ちやすくなりますよね。
⑥糸底
器の底。ろくろで成形した際、器を糸で切って台から外したことが名前の由来です。ちなみに、高台の内側を「糸中(いとなか)」と言いますが、これも糸底と名前の由来は同じです。
和食器の種類
和食器の種類は本当に多岐に渡ります。洋食器と比べても、形や大きさなど、バリエーションはかなり豊富。
また、洋食器はセットで使うことがほとんどですが、和食器は様々な器を組み合わせて使います。料理やシチュエーション、季節に合わせて、組み合わせをあれこれ考えるのも和食器を使う楽しみです。
ここでは、パーソナルアイテムとサービスアイテムに分けて、和食器の種類を見ていきます。
パーソナルアイテム
パーソナルアイテムは、個人で使う器を指します。
洋食器では、全員同じパーソナルアイテムを使いますが、和食器では、自分の好みのもの、手に合って使いやすいものを選ぶことができます。
ご飯茶碗
和食器といえば多くの人が真っ先に思いつく、一番身近な器ではないでしょうか。
これこそまさに、自分の手に合うものを選びたいもの。食べる量や手の大きさなど、選ぶ際のポイントが沢山浮かびます。
できれば、使う人が手に取って選べると良いですが、その人に合ったものを選んで、プレゼントで渡すのも素敵ですよね。
いずれにしろ、気持ちを込めたいアイテムです。
毎日使うものなので、あまり繊細ではなく、ガンガン使えるものが良いかもしれません。
湯呑み茶碗
お茶を飲んで、ホッと一息。これも、自分に合うものを選んで、リラックスアイテムにしたい器です。
お茶は、日本でも歴史がある飲み物です。お茶の種類によって入れ方やお湯の温度が変わってくるので、自ずと適した器も変わってきます。
例えば、熱湯で入れる番茶やほうじ茶は、手で触れたときに熱すぎないよう、厚みがある、筒状の湯呑み茶碗が合っています。
質の良い煎茶や玉露などは、そこまで高くない温度で入れるので、薄くて飲み口が広い汲出し茶碗を使います。
中皿・小皿
中皿は、五寸皿・六寸皿・七寸皿、直径15〜21cmの大きさです(ちなみに一寸は約3.03cmなので、お皿を選ぶときは、3cmでざっくり掛け算するとわかりやすいです)。
メイン料理を1人分盛り付けるのにちょうど良いお皿。自宅だと、カツやハンバーグなどを、サラダや副菜と一緒に盛り付けるとちょうど良い感じしょうか。
小皿は、三寸皿・四寸皿、直径10cm前後の大きさです。取り皿として使うことが多いですね。また、お醤油を入れたり、ちょっとしたソースや薬味を入れたりしてもちょうど良いです。和菓子など、小さいお菓子を乗せて出しても可愛らしく使えます。
小皿は形や色のバリエーションが多いので、揃えて買うのはもちろん、バラで1枚ずつ買って組み合わせて使っても楽しいですよ。
小鉢
皿はほぼ平らですが、小鉢は深さがあります。浅めの小鉢はお浸しなどちょっと汁気があるおかずに、深めの小鉢は鍋料理やスープ料理の取り皿にぴったりです。
汁気に関係なく、ポテトサラダをこんもり盛り付けたり、ゼリーやプリンなど、お菓子を盛り付けたり、見映えを考えて使うのも楽しい器です。
皿と鉢の違いについてはこちら↓↓
使う人次第!皿と鉢の違いは?
蓋物
他の器と比べると、自宅で使うことは少ないかもしれません。私の実家では、たまに茶碗蒸しを作るので、茶碗蒸し用の蓋物(蒸し茶碗)がありました。会席料理では見かけることも多いですね。
蓋は、温かい料理が冷めないように、という心遣いの表れ。寒い季節だと、どんな温かい料理が食べられるのか、開けるときにワクワクします。
夏も蓋物を使いますが、季節に合わせて薄手の器を使うことが多いです。
角皿
四角いお皿って、取り皿で使うことは少ないかもしれないですが、実はとっても重宝します。
ちなみに、取り皿に丸皿が多いのは、恐らく持ちやすいからではないかと思っています(個人差あり)。
角皿は、「盛り付けして映える器」かな、と思います。
焼き魚を丸皿に盛り付けると、なんだかしっくりこないですよね。横長の魚に対して、余るスペースが多いというか…。長皿(長方形の皿)だと、魚と薬味でぴったり綺麗に収まります。
お刺身なども、角皿の方が綺麗に無駄なく盛り付けできます。天ぷらも四方皿(正方形の皿)に立体感をつけて盛り付けると美しいですよね。
向付(むこうづけ)
元々は、懐石料理の1つに「向付」という献立があり、その料理と器を指していました。
左に飯碗、右に汁椀、その向こうに置かれていた献立、というのが向付の名前の由来です。
懐石料理では、向付(器)は、最初から最後まで通して置かれているもので、最初に盛られていた料理を食べた後は取り分け器としても使われます。
懐石料理の顔になる器なので、季節を感じさせる、独特の形のものが使われることも多いです。自宅で使っても、良いアクセントになりますよ。
懐石料理と会席料理の違いについては、別の記事で詳しく紹介していきます。
その他
他にも、料理やシチュエーションに特化したパーソナルアイテムが沢山あります。
蕎麦を食べるときに使う蕎麦猪口や、お酒を飲むときに使うぐい呑み、猪口などなど。箸や箸置もパーソナルアイテムです。
サービスアイテム
サービスアイテムは、食卓を囲む人みんなで一緒に使う器です。大きめのものが多く、食べる時はそこからパーソナルアイテムに取り分けます。外食で出てくる料理をイメージするとわかりやすいかもしれません。
料理との組み合わせや、見た目の美しさなど、食欲に直結するのがサービスアイテムと言っても良いでしょう。
大皿
大皿は、尺皿(しゃくざら)とも呼ばれ、直径1尺(約30cm)前後の大きさです。
刺身や寿司などを綺麗に並べて盛り付けたり、サラダなどを高さを出して盛り付けたりと、食卓を華やかにする、存在感ある器です。
皿いっぱいに盛り付けてももちろん良いですが、余白を残すことで皿の色味や形、魅力が引き立ち、バランスも良くなります。料理に足りない色味を皿で補うのも良いですね。
大鉢
こちらも食卓で大きな存在感を放つ存在です。大皿と同じように、大きさを生かしてたっぷり盛り付けると迫力が出て良いですね。
大鉢は深さがあるので、高さを出して、余白を意識することで見た目にも美しくなります。余白を生かせる器なので、柄が入っているものを使うのもおすすめ。
おばんざいを出すお店などでは、カウンターに大皿・大鉢で料理を並べているところもありますよね。器や盛り付けなど、とても参考になるので、機会があれば見てみてください。
皿と鉢の違いについてはこちら↓↓
使う人次第!皿と鉢の違いは?
土鍋
日本の冬には欠かせない鍋料理。そして鍋料理には欠かせない土鍋。一家に一つのサービスアイテムと言えば、土鍋ではないでしょうか。
鍋料理は、ある物を切って入れて煮込むだけ。シンプルだけど、余程のことがなければ美味しく温まることができる、どんな人にも嬉しい料理です。
丁寧に使えば、かなり長持ちするのも土鍋の良いところです。鍋料理以外に、ご飯を炊くのにも重宝します。
土瓶、急須
土瓶と急須の違い、知っていますか?
胴の上に持ち手のつるがついているのが土瓶、胴の横に持ち手がついているのが急須です。急須の持ち手の素材は、胴の部分と同じです。
土瓶は急須に比べて大きめなので、一度にたっぷりのお茶を作ることができます。また、直接火にかけられるので、煮出すお茶に向いています。
急須は土瓶と比べて小さめです。家庭に常備されているのは、急須が多いかもしれません。
低温で、時間をかけて入れるお茶には、急須を使うのが良いでしょう。
その他
飲み物や調味料を入れる器も、サービスアイテムの一種です。
お酒を飲む人にはお馴染みの徳利やお銚子も、何人かで一緒に使うものなのでサービスアイテムです。ここから、パーソナルアイテムであるお猪口に入れて、各々で飲む、ということですね。
徳利とお銚子の違いについてはこちら↓↓
酒飲み必見!徳利とお銚子は違うもの?
同じ流れで、醤油差しなどもサービスアイテムに分類されます。
和食器の種類を知って、素敵な食卓を!
普段の食事はもちろん、友人などを呼んで自宅で料理を振る舞うときにも、ここで紹介した器の種類を参考に、盛り付けやテーブルレイアウトを考えていただけたら嬉しく思います。
最初に料理を考えて、それに合わせて器を選ぶも良し、手持ちの器を並べてみて、そこから料理を考えるも良し、いずれにしても、器は料理に欠かせないもの。
特に和食器は、組み合わせ次第で様々なテーブルを作ることができます。
是非、器選びも含めて、日々の食事を楽しんでください!
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