箸は、日本で食事をする上で欠かせない食器です。
日本における箸の歴史は長く、その中で、仏教や神道が反映された日本独特の箸文化が形成されていきました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
箸だけ使うのは日本独特?知っておきたい日本の箸文化と歴史
日本の箸の種類は非常に多様です。用途や意味合いによって長さや形が異なり、細やかな工夫・美意識が垣間見えます。
知っておいて損はない!今回は、日本の主な箸の種類を、用途やエピソードを交えて紹介していきます。
目次
日本の箸の特徴
日本の箸の形は、先端(口をつける方)が細くなっています。長さは他の国と比べて短めで、個人個人の手の大きさに合ったものを使用します。
これには、魚料理をよく食べる日本の食文化が関係していると言われています。先端が細いことで、骨を避けたり、身をほぐしたり、細かい作業をしやすくなるのです。
また、長さについても、日本独特の食のスタイル「銘々膳」に合っています。
食事が一人分ずつ、あらかじめ盛り付けされた状態で提供されるのが銘々膳です。
「近くのものを、より食べやすく」と考えると、長さはそこまで必要なく、個人個人に合ったサイズであるのが一番ですよね。
ちなみに、中国の箸は日本と比べて先端が太く、長いのが特徴です。使う人によって箸の長さを変えることはなく、皆同じものを使用します。
中国では、大皿料理を小皿に取り分けて食べるスタイルが一般的です。「少し遠くのものを、しっかり掴んで食べる」ために、長く太めの箸を使うのが適しているではないかと思われます。
素材についても見ていきましょう。
昔から、日本の箸の素材は、木や竹といった植物性のものが多いです。これには、木や竹が豊富な日本の地理事情が関係しているようです。
自然素材の口当たりの良さが、長く好まれていることも大きいでしょう。
また、日本に古くから宿っている神道も、無関係ではないように感じます。
神道については、最初に紹介したこちらの記事を参照ください。
他国を見てみると、中国では、プラスチックや固めの木、象牙などの箸が見られます。韓国は、金属で作られたものが一般的です。
韓国で金属の箸が多いのは、もともと「毒殺防止」のためである、いう説があります。その昔、高い位の人達が毒殺から身を守るために銀の箸や匙を使っていたことから、金属の箸や匙が普及したと言われています。
同じ箸でも、食文化や地理、お国事情など様々な要素が絡み合い、それぞれ違ったものに進化していくのは何とも面白いですよね。
箸の種類と用途
ここでは、わかりやすく「パーソナル箸」と「サービス箸」に分けて、箸の種類を紹介していきます。
また、具体的な種類の画像については、楽天市場さんに出品されている実際の商品を紹介させていただきました。気になったアイテムは是非ショップページまで見に行ってみてくださいね。
パーソナル箸
形は、持ち手側が太く、口を付ける側が細くなっている「片口箸」と、先端が両方とも細くなっている「両口箸」があります。
塗り箸
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木の箸に色がついた漆を塗り重ねたもの。基本は普段使いの箸でよく見られます。
色柄は様々あり、自分好みのものを選べば「私の箸」という愛着が湧きやすいかもしれません。
木の素材そのままの箸より若干滑りやすい場合もあります。
丸箸
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断面が円形になっている片口箸。角がないので握りやすいのが特徴です。
角箸に比べると滑りやすい場合があります。
角箸
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断面が多角形になっている片口箸。四角の箸は比較的よく見られるのではないでしょうか。
三角や、五角以上の多角形の箸もあり、自分の手に馴染みやすいものを選べます。
角があるので掴みやすいですが、丸箸に比べると指への当たりが気になる場合もあります。
柳箸
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正月や慶事の場で使用する、柳を使った両口箸。祝い箸とも言われます。
正月などの「ハレの日」に箸が折れると縁起が悪い、というのが、強く丈夫な柳を使うようになった由縁のようです。
ちなみに、柳(やなぎ)→家内喜(やなぎ)と書いて縁起を担ぐこともあるようです。確かにおめでたい感じがしますよね。
また、柳箸は長さが決まっており、年齢などに関係なく、八寸(24cm)。八は末広がりの数字で、ここでも縁起を担いでいます。
利休箸
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茶懐石で使用する、杉を使った両口箸。一般的な個人箸よりやや長めです。
名前の由来は、もちろん茶の湯で有名な千利休。利休は客人を招く際、その都度自ら杉を削り、箸を作っていたそうです。
削りたての箸には杉の香りが残り、客人はその香りも楽しむことができます。利休の素敵なおもてなしの心が垣間見えるエピソードです。
ちなみに、利休箸は「利久箸」と書くこともあります。
これは、料亭などの飲食店で利休箸を使う場合に「利を休む」だと縁起が悪い、というのが理由のようです。
確かに「利が久しく続く」利久箸の方が縁起は良さそうですね。
割り箸
見分けるポイントは、持ち手側の断面。
ここでまとめて、主な種類を紹介しておきます。
【丁六箸】
持ち手側の断面が四角く、溝や丸みなどがない割り箸。名前の由来は「丁度六寸」であったこと。
しかし、実際には六寸という縛りはない場合が多いです。
【小判箸】
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丁六箸に丸みが付けられたものが小判箸です。
四つの角が丸く削られており、断面を見ると小判のような形に見えることから名付けられました。
【元禄箸】
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持ち手側の断面を見ると、四つの角には丸みがあり、溝もわかりやすく削られています。いわゆるよく見る割り箸は、元禄箸が多いです。
名前の由来は、金の量を節約した「元禄小判」です。
削る部分が多く、ある意味使用する木が節約されている、ということで、元禄箸と呼ばれるようになりました。
【天削】
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割り箸の中では高級な部類に入ります。天が削げているので、天削です。
持ち手側の断面が斜めになっています。これには「木目をより楽しめるように」という細やかな気配りが込められている、と言われています。
【利久箸】
利休箸は、割り箸でもよく見られます。
天削同様、割り箸の中では高級な部類に入り、懐石料理などによく使われます。
色々調べていると、割り箸の場合に「利久箸」と書く場合が多いように思います。
サービス箸
すす竹箸・ゴマ竹箸
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取り箸では、竹がよく使われます。
すす竹は、煙で燻された竹のことで、味のある色合いが特徴です。ゴマ竹は、ゴマのような斑点があるのでこのように呼ばれます。
竹で箸を作る際には「節」もデザインとして取り入れられます。持ち手側の一番先にちょうど節がくるように作られたものを「天節」、持ち手より中程に節がくるように作られたものを「中節」と言います。
ちなみに、取り箸でも両細や天削の形があり、茶懐石では用途別に使い分けられているようです。
家庭では、そこまで気にせず、気に入ったもの、使いやすいものをチョイスするとよいかもしれませんね。
青竹箸
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竹の中でも、青い竹を使用したものです。元の色をそのまま生かすものもありますが、青竹の色に塗られたものも多いです。
青竹箸は、懐石料理の八寸、焼き物を取り分ける際に使用します。基本的には個人で使用することはありません。
黒文字箸
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「クロモジ」という木を使った菓子箸。
お茶の席で和菓子を食べる際に使います。
基本は1本で使用しますが、2本で取り分けに使用する場合もあります。
菜箸
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野菜をとる調理用の箸。一般の箸よりやや長めです。
真魚箸
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魚や肉をとる調理用の箸。金属で作られます。
こちらも一般の箸よりやや長めです。
ハレの日の箸は「両口」
ハレの日のご馳走は、神様に捧げ、神様に感謝していただきます。両口箸は、片方の口は神様が、もう片方の口は人間が使い、一緒に食事をする「神人共食」のための箸なのです。
小さい頃から、お正月には両口の白く新しいお箸が並べられていましたが、形に疑問を持ったことはありませんでした。
しかし、大人になって形の由縁を知ることで、ハレの日の食事への感謝が増したように思います。
神様への気持ちを込めて両口箸を作ったのが元の流れですが、逆に、両口の意味を知ることで神様を意識できるようになる、ということもあるのかもしれませんね。
ちなみに、日本におけるハレの日は、大きく2つに分かれます。
一つは、年中行事です。正月や五節句などがそれにあたります。
もう一つは、人生の節目。誕生や結婚、還暦など、おめでたい日がそれにあたります。
割り箸は本当にエコじゃないの?
使い捨てのものは資源の無駄遣いであり、ゴミも増えて環境にも良くない。つまり「エコじゃない」という考え。確かにそうかもしれません。
割り箸は、そういう意味では「エコじゃない」ということになりますが、実際はどうなのでしょうか?
実は、日本産の割り箸は、間伐材や端材を使って作られるため、資源の無駄どころか、むしろ資源を無駄にしないように作られているのです。つまり、エコなのです。
しかし、現在日本で使われている割り箸の多くは、安価で大量に仕入れられる外国産です。
外国産の割り箸は、違法伐採された木を使っている場合もあり、環境に優しいものばかりではないようです。
マイ箸を持ち歩き、繰り返し使用するのは、もちろんものを大切にするという意味でも素晴らしいことです。
しかし、割り箸を使うことをその対極に置くのは、必ずしも正しいことではないのかもしれません。
書いているうちに「これも」「これも」と追加してしまい、思った以上に長くなってしまいました。
機能性と美意識、縁起。たくさんのものが込められた日本の箸。これからはほんの少し、こだわりを持って選んでみると、食卓が豊かになるかもしれません。
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