日本の主食といえば、米。
現代は、様々な土地の、様々な食材が簡単に手に入るようになり、「米はあまり食べないよ」という人も多いかもしれません。
しかし、昔からの日本の主食は、やはり、米ですよね。
ちなみに、私は米、大好きです。
そもそも、なぜ日本の主食は、米なのでしょう?
世界を見渡すと、米が主食の地域は、必ずしも多くありません。
当たり前ですが、主食には、その地域の地理が大きく関わっています。
また、主食は、その地域の食文化はもちろん、それ以外の様々な文化や歴史にも、大きな影響を与えています。
目次
温暖湿潤な気候が生んだ東〜東南アジアの米文化
基本的に、米文化のメインは、東アジアや東南アジアといった温暖湿潤な地域です。
東アジアは、私たちが住む日本や、朝鮮半島、中国など。東南アジアは、タイやインドネシアなどが思い浮かぶのではないでしょうか。
温暖湿潤=湿度が高く暖かい土地は稲作に適しているため、これらの地域では米がよく育ち、食べられるようになっていきました。
米文化と魚文化
また、稲作には水が欠かせず、水が潤沢な土地が有利、と考えると、そこで生きているのは、魚。
ということで、米がよく食べられる地域では、セットで魚もよく食べられるようになりました。
ちなみに、調味料でも魚を使ったものが多く見られるのは、アジアならでは。魚を発酵した「魚醤」は、その代表的なものではないでしょうか。
タイのナンプラーや、ベトナムのニョクマム、日本でも、秋田のしょっつるなど、様々な地域で特有の魚醤が見られます。
また、食事の味を決める上で重要な「出汁」についても、魚介のものが多いのは自然な流れです。
日本が誇る和食にも、鰹出汁、昆布出汁が良く使われますよね。
米文化と酒、菓子文化
嗜好品でも、アジア圏では米文化の影響が強く見られます。
例えば、米を使ったお酒。
日本酒や中国の紹興酒は有名ですね。タイにも、ラオロンという米が原料のお酒があります。
また、お菓子でも、アジアの広い地域で、米を使ったものが多く存在します。
日本だと、餅菓子などの和菓子。煎餅なども米を使っていますね。タイやベトナムなどでも、もち米を使った昔ながらのお菓子が沢山あります。
米文化と衣住文化
米文化は、食以外の文化にも大きな影響を与えています。
稲作が盛んな地域は、牧畜などを行わず農耕がメイン。よって、衣類には主に植物性繊維が使われました。
また、同じ場所で作物を育てるため、住まいは定住化していき、それにより、集落が誕生します。
集落では、収穫物を保管する倉庫なども作られていきました。
日本だと、高床式倉庫、学生時代に習いましたよね。
このように、食べるものは、文化の一部でありながら、文化全体の方向性を決めているようにも見えてきます。
寒冷乾燥な気候が生んだ西〜中央アジア、ヨーロッパの麦文化
次は、麦文化の地域を見ていきましょう。
麦、特に小麦を主食とする主な地域は、西アジアや中央アジア、ヨーロッパなど。
これらの地域は寒冷乾燥であり、麦作に適しています。
また、寒冷乾燥地域は、先に紹介した温暖湿潤な東〜東南アジアに比べると、農耕をするのにそこまで適した土壌ではありません。
そこで、農耕以外に食物を確保する目的で、牧畜も広く浸透していきました。これには、土地が広大で家畜を育てやすかったことも影響しています。
家畜に食べさせる飼料を育て、牧畜を行い、小麦などの土地に適した作物を育てる。
このように、畑作と牧畜を組み合わせたスタイルが、この地域の大きな特徴です。
ちなみに、小麦の外皮は剥がれづらく、米のように粒で食べることは難しいため、粉に加工し食事に使われます。
これが、小麦粉。こうして、パンや麺類がこの地域の主食となっていきました。
麦文化と肉文化
先に述べたように、麦が主食の地域では牧畜を伴うため、麦と肉がセットで食べられます。
また、主な家畜が牛や羊といった乳を出す動物だったことから、そこにチーズやバター、牛乳、クリームなども加わり、独自の食文化が形成されていきました。
ヨーロッパといえば、美味しいチーズやバターを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。パンやパスタのメニューでも、チーズやバターを使ったものが沢山あります。
出汁についても、家畜の肉や骨を煮込んで出るものがメイン。フランス料理の「ブイヨン」なんかは有名ですよね。
このように、米文化の地域は「さっぱりめ」、麦文化は「こっくりめ」の食事が多く、対照的です。
麦文化と酒、菓子文化
乳製品が豊富だった麦文化の地域では、当然菓子文化も栄えます。
小麦粉+乳製品といえば、ケーキやクッキーなどの焼き菓子。今ではスイーツといった方が馴染みがあるかもしれません。
フランスなどでは、今も美味しく芸術的なスイーツが沢山見られます。旅行で訪れた時、スイーツ巡りを楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。
また、ビールやウイスキーといった、麦由来のお酒も、この地域から生まれ発展していきます。
ビールはメソポタミアで誕生したと言われており、特にヨーロッパでは各国独自のビールがどんどん栄えていきました。
ちなみに、私の大好きなお酒はビールです。好きが過ぎて、勉強して、現在ビール検定を2級まで取得しています(1級はとても難しく、今のところ不合格)。
機会があれば、ビールの歴史についてもこのサイトで紹介していきたく思っています。
麦文化と衣住文化
麦作+牧畜の地域では、動物と共に生活をしていため、着る物には動物の皮が多く使われました。
また、遊牧を行なっていた民族は、組み立て、持ち運びできるテント式の住居で、移動しながら生活をしていました。
米文化の地域と比べると、植物性衣類と動物性衣類、定住と移動と、こちらも対照的ですね。
米文化と麦文化は、明確に分けられない
ここまで、米文化と麦文化を比較する形で紹介してきましたが、もちろん、全てがはっきりこの2つに分けられるわけではありません。
例えば、中国は土地が広大なため、気候も場所によって様々です。北は麦+牧畜の文化ですが、南は米+魚の文化と、同じ国でも大きな違いがあります。
また、東アジアの括りに入るモンゴルですが、こちらは牧畜がメインであり、麦+肉の文化。遊牧民族の住居「ゲル」は有名ですね。
私たちが住む日本でも、今でこそ米が盛んに作られる北海道ですが、本州で稲作が盛んになった時代は、稲作は浸透していませんでした。沖縄も同様です。
また、米文化の地域でも、お肉が全く食べられなかったわけではなく、豚や鶏など、稲作をしつつ飼育されていた動物もいました。
ただし、日本では稲作が定着してのち、早い段階で「肉食禁止令」が出されたため、表向きはお肉を食べない文化が長く続きます。これについては日本史の分野で紹介していきます。
地理が主食を作り、その主食が、その後の人々の文化を作る
いかがでしたか?米文化と、麦文化。
日本の和食や和菓子、ヨーロッパのスイーツ、パスタやピザなど、今当たり前に食べられているメニューは、このような地理的事情が相まって生まれ、発展してきたのか、と考えると何だか面白いですよね。
大まかに地域で分けて見ていってますが、地域というより、地理的環境が文化を作っていく、という感じでしょうか。
そして、実は、文化が形成されるかなり最初の方に、食が大きく関わっている。
このように見ていくと、食文化って、歴史において、本当に重要な立ち位置だなあと感じます。
食文化から、地理や歴史を学び直すのも、面白いかもしれません。
※WEAの記事の参考文献、引用画像サイト一覧はこちら