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九谷焼とは?力強く華やかな技法と古九谷〜再興九谷への変遷。

九谷焼のお皿

※この記事は、2023年の金沢旅行を機に書き進めていたものです。年が明け、このような災害が起こってしまったこと、本当に心が痛いです。旅行は本当に楽しく、次回は加賀市や能登にも足を伸ばしたいと思っていました。被災地が少しでも早く復興することと、被害に遭われた皆様に少しでも早く穏やかな日々が戻ることを、心よりお祈り申し上げます。

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石川県金沢市と言えば、今や日本屈指の観光地。

玄関口の金沢駅は、日本人はもちろん、外国人観光客も多く行き交います。活気に満ちた風景を眺めていると、自然と高揚感が高まります。

金沢と言えば、兼六園や金沢城、ひがし茶屋街など、歴史と趣のある観光スポットが多く浮かびますが、他にも是非触れてほしいのが、加賀独自の華やかな「伝統工芸」です。



金沢旅行と九谷焼

九谷焼の小皿

昨年9月頭、金沢に行ってきました。

初金沢だったので、メディアでよく見る金沢駅の鼓門にもテンションが上がります。宿は、ひがし茶屋街のすぐ近くだったため、夜と早朝、人がほとんどいない茶屋街をゆっくり散歩することができました。なんだかタイムスリップしたような、異世界に入り込んだような、不思議な感覚になったのをよく覚えています。

観光スポットを散策したり、宿で感動的なお食事をいただいたりする中で(本当に美味しかった)、ことあるごとに目にしたのが、加賀の伝統工芸品。

金箔や漆器、金沢友禅など、多くの伝統工芸品がある中で、やはり心奪われたのが、「九谷焼」の華やかさです。

観光スポットで売られているのはもちろんですが、宿のお部屋のお茶セットが九谷焼で揃えられていたり、お食事でも九谷焼の器が効果的に使われていたり、実際に九谷焼に触れる機会が多かったのが、この旅の大きな思い出となりました。

前振りが長くなってしまいましたが、個人的にもこれを機に九谷焼について改めて学びたく、この記事では九谷焼についてまとめてみます。

簡単解説!九谷焼とは?

3枚並んだ柄違いの九谷焼小皿

九谷焼は、江戸時代前期に現在の加賀市、九谷町で誕生しました。

当時は「大聖寺藩」という加賀藩の支藩があった地域のため、「大聖寺焼」とも呼ばれていたそうです。

江戸時代後期には、金沢市や小松市、能美市など近隣地域にも広がっていき、様々な窯が造られ発展していきます。

九谷焼の特徴は、華やかな色絵です。有名なものを3つ見ていきましょう。

青手

古九谷様式,Ko-kutani Style『色絵牡丹文鉢』(東京富士美術館所蔵)
「東京富士美術館収蔵品データベース」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-7050)

緑・黄・紫・青を使った色絵。赤は使わず、緑と黄の組み合わせが印象的です。

素地の色が見えないくらい全体に色が施されているものが多く、迫力を感じます。

ちなみに、九谷焼の特徴である、器のベースを文様で埋め尽くす「地紋つぶし」の技法は、青手の作品で多く見ることができます(黄色い柄の部分)。

九谷五彩

九谷五彩の皿

赤・青・紫・黄・緑の5色を使った「五彩手」という色絵。青手には入らない赤が入るので、より華やかな印象です。

九谷五彩で多く見られるのは、器の中にキャンバスのような空間(窓)を作り、そこに絵を描いていく「窓絵」という技法。窓の周りは、細かい絵や文様で幾何学的に並べ埋め尽くされます。キャンバスに対する額縁のような立ち位置といえますね。

窓には、花鳥・山水や季節を表すもの、風景など、絵画的な文様が描かれています。

赤絵・金襴手

赤絵の九谷皿

九谷・飯田屋八郎右衛門,東京国立博物館『赤絵猪文稜花鉢』(東京国立博物館所蔵)
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-78299)

赤の絵の具をメインで使い、文様を施した色絵。緻密な絵や模様が描かれており、青手のダイナミックさと比べて繊細なイメージです。

また、赤絵に金色で絵付けしているものは、金襴手と呼ばれます。赤色の上に金色で細かい模様が描かれており、緻密さに絢爛さがプラスされています。

九谷焼の始まりなのか?有田発祥なのか?謎が残る「古九谷」

古九谷様式,Ko-kutani Style『色絵松山水文大皿』(東京富士美術館所蔵)
「東京富士美術館収蔵品データベース」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-7051)

現在の九谷焼のルーツとなった焼き物は「古九谷」と呼ばれています。

古九谷は、江戸時代前期に九谷町で焼かれたもの、ということでこのような名前がついていますが、昭和20年代に入ってから、古九谷は有田で焼かれていたのではないか、という説が浮上します。

これにより、激しい「古九谷論争」が巻き起こりましたが、九谷産、有田産、一体どちらが正しいのか、現在も完全に決着はついていないようです。

詳しく知りたい方は、本やネットで多くの情報が出ているので、調べていくと面白いかもしれません。

私も記事を書くにあたり色々調べてみましたが、なんとも不思議だな、というのが感想です。

有田の窯跡から、古九谷様式(※)の器が出ているのも事実なようですし、一方、江戸時代前期に九谷町で器が焼かれていたのもまた事実なようです。

これから新たな事実が判明するかもしれませんが、いずれにしても古九谷様式が現在の九谷焼に大きな影響を与えているのは間違いありません。

※産地のことは一旦置いておいて、色絵のスタイルを指す言葉として「古九谷様式」という言葉が使われているようです。

有田焼についてはこちら↓↓
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現在の九谷焼につながる、「再興九谷」

九谷春日山の皿

九谷・春日山,Kutani Kasugayama ware,内藤堯宝氏寄贈,Gift of Mr. Naitō Gyōhō,東京国立博物館,Tokyo National Museum『色絵龍文五角鉢』(東京国立博物館所蔵)
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-80659)

江戸時代前期に九谷町で誕生した窯は、わずか50〜60年で廃窯したと言われています。

そこから約100年の時を経て開かれたのが、「春日山窯」です。

春日山窯以降、江戸時代後期の九谷焼は、「再興九谷」と呼ばれます。ここでは、再興九谷の主な窯の特徴をまとめてみました。

春日山窯

京都から青木木米という人物を招いて開窯しました。

赤絵が特徴で、花鳥など、中国の絵柄が多いのが特徴です。あまり長く続かず、およそ13年で廃窯しました。

吉田屋窯

1820年代、大聖寺藩の商人だった豊田伝右衛門が、九谷焼の再興を目指して開窯。彼の屋号である「吉田屋」を掲げました。

古九谷によく見られる青手のデザインが特徴。ダイナミックで写実的な作品は、多くの人から支持を得たものの、採算度外視の経営が長く続かず、およそ7年で廃窯します。

宮本屋窯

廃窯した吉田屋窯を、現場の支配人であった宮本屋宇右衛門が引き継ぎ開窯しました。

絵付け職人、飯田屋八郎右衛門が、緻密な赤絵に金彩を施した「八郎手」という技法を確立。

鉢や日用品なども多く作られました。春日山、吉田屋より長く、約28年続きました。

九谷庄三

幕末〜明治初期の陶芸作家。

再興九谷のあらゆる技法を取り入れ、「彩色金襴」という華やかな技法を確立し、国内外での九谷焼の浸透に大きく貢献しました。

また、いち早く洋絵具を用いて、それまでなかった「中間色」を器に表現したことでも有名です。



九谷焼を食卓に取り入れるポイント

九谷焼の湯呑みと茶菓子

九谷焼は、装飾部分が多く、彩りも華やかで、独特です。そのため、日常使いに向かないのでは?と感じる人も多いかもしれません。

しかし、思わず見惚れてしまう色合いや絵柄は、上手に使えば普段の食卓をさらに楽しいものにしてくれるはず!

まず、取り入れやすいのは、湯呑みやコーヒーカップ&ソーサーのセットなどの、パーソナルアイテムです。

前述しましたが、金沢旅行の際、宿のお部屋に九谷焼のお茶セットがあり、「ああ、これを自宅で揃えられたら、お茶の時間が楽しくなるだろうなー」と強く思いました。

飲み物の器なら、料理や他の器との組み合わせをそこまで深く考えず、単体で取り入れることができるので、ハードルが低そうです。手に取り、絵柄を眺めながら楽しめるのも嬉しいところ。

3枚並んだ柄違いの九谷焼小皿

他には、アクセントとして、豆皿や小鉢などを取り入れるのも良いかもしれません。

豆皿をお刺身の醤油皿に使ってみたり、小鉢に酒のつまみを盛り付けてみたり。

ちなみに、金沢発祥の回転寿司で有名な「金沢まいもん寿司」では、九谷焼の醤油皿を使っており、たまに行くとテンションが上がります(そしてもちろん美味しい)。

また、ある程度大きいサイズの器であれば、皿より鉢の方が使い勝手が良いかもしれません(あくまで個人的見解です)。深さのある鉢に煮物などを盛り付ければ、周りの柄を上手に生かせますし、立体感も出ます。

とは言え、今は昔ながらの絵柄だけではなく、独特な色合いはそのままに、モダンなデザインのものも多く作られています。あまり気にせず、自分の感性のままに取り入れるのが面白いかもしれないですね。

「加賀百万石」が育んだ、豪華絢爛な文化、九谷焼。

是非一度、直接石川県に足を運んで、体感してみてくださいね。

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