食事をするなら、できるだけ美味しいものを食べたい。
私は1日のうちの大半、美味しいもののことを考えて生きている気がします。
朝は朝ご飯を楽しみに起きるし、
家事や仕事中は、頑張った後のランチを想像してモチベーションを上げているし、
帰宅したら、夜ご飯は何を作るか、冷蔵庫にどんな食材があったかを頭の片隅でずっと考えているし、
友人や家族と外食する時は、どんな美味しいものを食べられるのかワクワクするし、
いつからか、それが当たり前になっていました。
よく夫に、「お昼ご飯を食べている時に、よく夜ご飯の話をできるよね」と言われます。
夫は、「食事中でどんどん満腹になっていく時に、次食べるもののことなんて考えられない」んだそう。
そんな人もいるんだなーと、目から鱗だったのをよく覚えています。
目次
「美味しい」とは何なのか。
ところで、「美味しい」というのは、一体どういう概念なのでしょうか。
広辞苑では、“物の味がよい。うまい。”とあります。
まあ、確かにその通りなのですが、ここでお話したいのは、「味がよい。うまい。」とは、どこで感じたものなのか?ということです。
まず考えるのが、「味覚」で感じているだろう、ということではないでしょうか。
しかし、実際のところ、「美味しい」とは、人間が持つ五感全てで感じているものであり、味覚で感じている「美味しさ」はごくわずかであることがわかっています。
さらに詳しく言うと、「美味しさ」「まずさ」は、脳が、五感と温冷痛圧などの局所的な感覚を感知し、呼び起こした感情に起因するところが大きいそうです。
それがプラスの感情であれば「美味しい」、マイナスの感情であれば「まずい」という感情になるんですね。
視覚が最も影響大!五感別の「美味しさ」
結論から言うと、五感の中で「美味しい」という感情に最も影響を与えているのは、「視覚」です。
初めて知った時、私はかなり驚きました。それまでは、味覚で「美味しい」と感じていると、当たり前に信じていたからです。
しかし、よくよく考えてみると、同じ料理でも、目隠しをして何かわからないものを恐る恐る食べるのと、彩りが良く、湯気が立ち、ジューシーなソースがかかっているのを目にして食べるのでは、感じる美味しさは全く違いますよね。
例え同じ味付けでも、その他の要素によって、美味しさは大きく変わってくるのです。
せっかくなので、「美味しい」というプラスの感情を引き出す感覚の割合を、五感別に見ていきましょう。
視覚で感じる「美味しさ」
「美味しい」という感情は、何と80%以上が視覚から得られたものだと言われています。
「目で食べる」なんていう言葉もありますが、まさにそれですね。
食材や料理が美味しそうに見えることを、写真用語で「シズル感」ということがあります。
綺麗に盛り付けされ、ソースがきらきら光っている料理の写真を見て、「美味しそうだな、食べたいな、お腹空いたな」と思った経験、皆さん、ありますよね?
簡単に言うと、それが「シズル感」です。
さらに、食べ物自体ではなく、おすすめメニューを美味しそうに食べる芸能人や、自然豊かな草原で楽しむバーベキューをTVで見て、「美味しそう」と思ったこともありませんか?
これも、視覚から得る「美味しい」という感情です。
ちなみに、食における視覚環境全体を100%とすると、面積の割合としては、景色が65%前後、食器や小物類は30%前後、目の前の料理はたったの5%となるそうです。
視覚の中でも、料理の見た目以上に、その周りの環境が大切だということがよくわかりますよね。
聴覚で感じる「美味しさ」
「美味しい」という感情の約7%は、聴覚から得られたものだと言われています。
わかりやすいところで例えると、「ジュージュー」という食材の焼ける音や、お蕎麦、ラーメンを食べる「ズルズル」という音(これは日本人だけ?)、クッキーをかじった時の「サクッ」という音などなど。
例えを挙げただけでも、お腹が空いてきますね(笑)
触覚で感じる「美味しさ」
「美味しい」という感情の約3%は、触覚から得られたものだと言われています。
触覚は、手触りや舌触り。
手でパンをちぎった時のモチっと感やフワッと感、プリンを口に入れた時のとろけるような感覚、ビールをグイッと飲んだ時のシュワっとした爽快な感覚なども、触覚に当てはまるのではないでしょうか。
嗅覚で感じる「美味しさ」
「美味しい」という感情の約2%は、嗅覚から得られたものだと言われています。
思ったより少ないと思いませんか?
カレーのスパイスの香り、バターがフライパンでジュワッと溶ける匂い、スイーツから香る、バニラの甘い匂い。
キッチンから食事の匂いがしてくると、「あー、お腹すいたなー」とワクワクしますよね。
割合としては少ないものの、「美味しい」という感情の、大切な要素です。
味覚で感じる「美味しさ」
そして、元々一番多いと思っていた、味覚の割合は、たった1〜5%。
味覚は、「五味」という、味の基本の要素である甘味、塩味、酸味、旨味、苦味の感知です。
五味のバランスを認知するだけで、「美味しい」というプラスの感情を引き出せるわけではないんですね。
メンタルや体調も大きな要素。「美味しい」と心・身体の関係。
もちろん、五感の他にも「美味しさ」に関係する要素はあります。
一つは、メンタル。
楽しい、嬉しい気持ちで食事をすると、いつも以上に美味しく感じることがありますよね。
反対に、悲しい、辛い気持ちで食事をして、胸いっぱいで味を感じることができなかった、という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?
また、せっかく美味しい料理を食べていても、時間がなく、焦っていたりすると、十分に美味しいと感じることができません。
このように、心の持ちようが、美味しさを左右することも多いのです。
もう一つ、その時の体調も、「美味しさ」に大きく関わってきます。
例えば、ラーメンが大好物でも、胃もたれ気味の日に食べるとちょっと辛かったり、身体を目一杯動かして腹ペコの時に何気なく食べたものが、とてつもなく美味しく感じたり。
つまり、メンタルや体調が整っていれば、より美味しい食事ができるということ。
当たり前かつ、何だか大袈裟ですが、楽しみな食事の前にお腹を空かせておいたり、ワクワクした気持ちになることも、いわば美味しい食事のための下準備、ということになりますね。
他に、価値観や過去の経験、人間関係なども、「美味しい」という感情に影響を与えます。
「美味しい」は、多くの要素から作られていた!
このように、「美味しい」とは、単なる味のみを指すのではなく、食事をいう場を取り巻く環境や、食べる人の状態が大きく関係するものです。
味付けはもちろん大切ですが、それ以外の部分でも、「美味しい」を作ることができる!
そう思うと、料理の一手間や盛り付けにも、ほんの少しこだわってみたくなりませんか?
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