器に興味を持ち、うつわ屋さんや陶器市に足を運ぶようになると、「あ、この柄、このデザイン好きだな」「この色よく見かけるな」など、自分の琴線に触れるものがわかってくるのではないでしょうか。
器に釉薬で色を付けたり、文様を付けたりするテクニックを「技法」と呼びます。技法名は、そのテクニックを使った「焼き物自体」を指しても使われます。
和食器は、中国や朝鮮の技法を独自に発展させ、季節や、真・行・草の使い分けなど、細やかな美意識を表現しているのが大きな特徴です。
「食器の基礎:器の名前の付け方ルール。知ると器がよくわかる!」でも詳しく触れていますが、器の名称にはだいたい技法が組み込まれています。つまり、ある程度技法の種類を知っておくと、自分が好きなタイプの器を見つけやすくなるのです。
ここでは、和食器を技法の観点から見ていきます。
恐らく、見かけたことがあるタイプの器が、いくつか出てくるはずです。
とりあえず、特に分類などせず、主なものを一気に紹介していきます。わかりやすいように、画像や参考URLをつけていきますが、わかりづらいものにつきましてはご容赦ください。技法名でネット検索してみると、画像自体はたくさん出てくると思いますので、是非ご自身でも検索してみてくださいね。
この記事で、今までぼんやりと「こんな感じの器が好みだなー」と思っていたのが、はっきりと「私はこの技法が好きだ!」と言えるようになっていただけたら、とても嬉しいです!
目次
焼き締め
備前焼、丹波焼、越前焼などが有名です。
炻器は、いわば陶器と磁器の中間に当たる器です。陶器より高い温度で焼かれ、吸水性がなく、磁器と違い透光性がありません。
陶器と磁器については、以下で特徴をまとめているので、よければご覧ください。
白磁
素地にも釉薬にも鉄分を(ほぼ)含まず、透明の釉薬をかけて焼くため、もとの白さがそのまま生かされているのが特徴です。
日本には江戸時代に伝わり、有田で作られたのが最初と言われています。
青磁
鉄分が含まれる釉薬をかけて、酸素の供給が少ない「還元焼成」をすることで、青緑色になります。
素地は白いものが基本ですが、灰色など色がついたものの場合も広く青磁と呼んでいるようです。
織部
名前の由来は、千利休の弟子である、茶人の古田織部。個性的な形や模様など、織部好みの器を総じて「織部」と呼ぶようになりました。
独特な緑釉を使った「青織部」が有名ですが、他にも黒織部、赤織部、志野織部など、様々な種類があります。
余談ですが、私が最初に見てわかるようになったのが織部です。展示会で多くの器が並ぶ中でも、織部はパッと見てわかりやすいように思います。
志野
灰白色の素地に長石から作られた白い釉薬を「厚く」かけられています。
温かみのある形、ところどころに出る赤褐色が温かい印象です。
鼠色が強いねずみ志野、紅色が強い紅志野など、様々な種類があります。
個人的には、志野も織部同様に、覚えてしまうとパッと見てわかりやすい技法のイメージです。
染付
藍色の顔料は「呉須(ごす)」と言われます。酸化コバルトという物質を含んでおり、還元焼成されることで藍色に発色します。
染付は、釉薬をかける前に絵付けをする「下絵付」を代表する器です。
色絵
色絵は、何色もの絵の具を使って紋様などを描き、その後さらに800度程度の低温で焼いたものです。
江戸時代に中国から日本に伝わり、有田焼(伊万里焼)によく見られます。
赤絵
色絵の一種なので、こちらも「上絵付」です。
金襴手
金彩が加わることで、より豪華絢爛な見た目になりますね。
中国、明の景徳鎮窯で作られていた器を、金糸で模様を織った「金襴」という織物にちなんで「金襴手」と呼んだことが名前の由来です。
染錦
上絵だけの色絵や金襴手と違い、下絵がついたものにさらに上絵を描いているのが特徴です。
様々な色の絵の具や金彩を使うため、デザインはとても華やかで、海外で人気の「伊万里」にも多く見られます。
伊万里、有田焼について詳しく知りたい方は、こちらも是非ご覧ください。
象嵌
器における象嵌は、素地を彫って凹文様をつけ、素地と色の違う粘土をそこにはめ込み、透明の釉薬をかけて焼いたものを指します。
化粧土を使っている器では、化粧土を掻いて文様をつけ、同じように作ります。
素地や化粧土と、はめ込んだ粘土の色が違うため、文様がはっきりと出るのが特徴です。
三島
また、花や渦などの文様を、スタンプで連続捺しする「印花」という手法を使っているのも、三島の大きな特徴です。
もとは朝鮮の李朝を代表する器で、日本では唐津や京焼などで技法が受け継がれています。
粉引
化粧土は、器の成形に使う土とは違うもので、素地の色や形を変えるために使います。
粉引は、化粧土の厚みと白色によって、温かな印象を与えてくれる器です。
白い粉を引いたような見た目が、名前の由来です。
貫入
器を焼いて冷ます際、生地と釉薬の収縮度の違いで表面にひびが生じることがあります。
これを文様として生かした技法を、そのまま貫入と呼んでいます。
使うごとに、貫入の様子が変わり、味が出てくるのも面白いところです。
貫入も、一目見てわかりやすく、覚えやすいですね。
刷毛目
刷毛の跡が生かされたデザインが特徴的です。
櫛目
器における櫛目もそのまま、櫛ですいたような筋目模様がついているものを指します。
画像のように、皿の円形に沿って筋目がついているものや、湯呑みの側面に縦にぐるっと筋目を入れたものなど、様々なデザインがあります。
布目
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※楽天市場さんの商品バナーを参考に掲載させていただきます。
もとは、型を使って器を作る際、くっつき防止で型と器の間に濡れた布を挟んでいたら布の跡がついたのが始まりで、その後装飾技法として使われるようになりました。
織部の器でよく見られます。
掛け分け
皿などを中央からちょうど2つに色分けしたものから、釉薬が自然に流れる様子をデザインに生かした「流し掛け」などがあります。
スリップウェア
スリップと呼ばれる緩めの化粧土を、素地が乾き切らないうちに流し掛け、さらにその上からスポイトで垂らす、筆を使うなどして文様を描いた、独特のデザインです。
スリップウェアを日本に広めたのが、民藝運動の主要メンバーであるバーナード・リーチ。
民藝運動については、改めて記事にしてまとめたいと思っております。
こちらも使える画像が見つからず、参考に日本民藝館のリンクを貼らせていただきます。
和食器の技法、知れば知るほど器が欲しくなる!
焼き方、色の出し方、文様の付け方など、本当に様々な方法があり、改めて、食器って芸術品だなーと感じますよね。
是非、食器を選ぶ際の参考にしてください!
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